『TAKE NOTES!』の「はじめに」を読む
「書くこと」は生活の一部になっている
たとえば?
自分の考えを整理する
誰かとアイデアを交換する
アイデアや引用や研究の成果など、何かを覚えておく必要がある
テストを受けるとき
rashita.icon現代日本でいわゆる会社員として働いている人は、上記のようなことはどれだけ生活の一部であろうか。
あらゆる知的な試みは書くことからはじまる
「知的な試み」という限定
rashita.iconすべてはノートからはじまる
書くことは、学習や研究、仕事で中心的な役割を果たす
ここは for Students, Academics and Nonfiction Book Writersのフレーズと呼応する
にもかかわらず「書くこと」に無頓着な私たち
書き方が問題になるのは、書籍や記事などのまとまった文章や、論文やレポートの提出物という「特別な状況」がきたとき
「特別ではない状況」つまり、毎日書くメモについて教えてくれるものではない
書き方をテーマにした書物は二種類に分類できる
体裁(文体、文の構造、引用のしかた)を説明するもの
心理面(ストレスに負けずに最後まで執筆する方法、締め切りに間に合うようにする方法)を説明する
どちらも「まっさらな画面や紙のうえで書きはじめる」点は共通している
そうすると「肝心な部分」を無視する羽目になる
rashita.icon肝心な部分とは?
そうならないようにするための解決策が、メモをうまくとること
「そうならない」の「そう」は何を意味している?
肝心な部分を無視すること?
まっさらな画面や紙のうえで書きはじめるということ?
メモを無視するような書き手は、どんな原稿でも構成を改善すれば差がつくことをわかっていません。
rashita.iconまず、執筆ノウハウについて書かれた日本語の書籍で「メモ」が無視されている例はむしろ少ないのではないか、という疑問。海外(アメリカやドイツは不明。また義務教育で行われる執筆指導の内実も不明)
rashita.icon次に、「メモを無視する書き手が、原稿でも構成を改善すれば差がつくことをわかっていない」、という論理のつながりも不明瞭。
rashita.icon「メモを無視する書き手」というのは、どういうプロセスを踏んでいる書き手なのかのイメージがかなり曖昧
原文ではBut by doing this, they ignore the main part, namely note-taking, failing to understand that improving the organisation of all writing makes a difference
このTheyは、書き方をテーマにした書物の書き手のことだろう。
その書き手がメモを紹介することを省いていても、「メモを無視するような書き手」だという保証はない。
ノウハウは、テーマに限定して語るのだから、それ以外の領域は語らないのは当然。
writingが原稿として訳されているが、これは「執筆(活動)」という意味だろう。
物書くという行為で起きるorganisationを改善すれば違いが生まれる、ということ。
構成、組織化、文章の組み立て方、作り方、という感じ。
ものを書くプロセスは、まっさらな画面や紙に向かうはるか前からはじまっている
自分の主張を実際に書き記す作業は、論旨の展開の最もささいな部分にすぎない
rashita.icon概ね同意だが、「最もささい」と言えるほど単純だろうか、という疑問はある
原文ではsmallest part。小さいというよりも、基底の(atomicなに近い)イメージではないだろうか。
ささいな、と翻訳してしまうと、重要度が軽く感じられてしまう。
このギャップを埋め、思考や発見を説得力のある文章に効率的に変換し、賢いメモという財産を蓄積していく方法を伝えるのが、本書の目標。
rashita.icon「このギャップ」は何を意味しているか
The available books fall roughly into two categories. The first teaches the formal require-ments: style, structure or how to quote correctly.
And then there are the psychological ones, which teach you how to get it done without mental breakdowns and before your supervisor or publisher starts refusing to move the deadline once more. What they all have in common, though, is that they start with a blank screen or sheet of paper.! But by doing this, they ignore the main part, namely note-taking, failing to understand that improving the organisation of all writing makes a difference. They seem to forget that the process of writing starts much, much earlier than that blank screen and that the actual writing down of the argument is the smallest part of its development. This book aims to fill this gap by showing you how to efficiently turn your thoughts and discoveries into convincing written pieces and build up a treasure of smart and interconnected notes along the way. You can use this pool of notes not only to make writing easier and more fun for yourself, but also to learn for the long run and generate new ideas. But most of all, you can write every day in a way that brings your projects forward.
rashita.iconThey seem to forget
rashita.icon目標は一つなのか二つなのか
一つ
「思考や発見を説得力のある文章に効率的に変換し、賢いメモという財産を蓄積していく方法を伝える」
二つ
「思考や発見を説得力のある文章に効率的に変換する方法」を伝える
「賢いメモという財産を蓄積していく方法」を伝える
ここがはっきりしていないと、方法の使い方が見定めにくい
賢いメモという財産を蓄積していくことが主軸なのか、思考や発見を説得力のある文章に効率的に変換することが主軸なのか
またその目的は、「知的な試み」の全般をカバーしているのか、それとも部分的なのか
貯まったメモを使うと、以下が簡単で楽しいものになる
書くこと、長きにわたって学ぶこと、新しいアイデアを生み出す作業
rashita.icon貯まったメモを使わない状態に比べたら「簡単」ということだろう。実際、これらの行為が簡単であるはずがないのだから。あるいは「簡単」という言葉のニュアンスがここでもズレているのかもしれない。
You can use this pool of notes not only to make writing easier and more fun for yourself,
より楽に書け、より楽しめるようになる、という感じ。やはり比較して、というニュアンスがある
それ以上に大切なのが、「自分のプロジェクトを前に進めるようなかたち」で毎日書けるようになること
大切なのは、調査や学習や研究のあとで書くのではないということです
書くことは、これらの仕事のすべての間にある
rashita.iconこれはまったくもってその通り
だからこそ毎日書くもの(メモや草稿)についてはめったに考えないのではないか
常にやっていることには注意が向かない
rashita.icon「常にやっているのか」が疑問。学者やノンフィクションライターならば当然常にやっているだろうけども、日常生活ではどうだろうか。
rashita.icon一方で、たしかに常にやっているがゆえに注意を向けない。だから、言及しないということもある。つまり、文章の書き方を提示する人にとって、メモをとるのが自明であるがゆえにノウハウとして言及されない、という自体は起こりえる。
rashita.iconつまり、二つの状況は重なりうる。片方では「書くこと」をほとんど行っていない人がいる。その人たちはそもそもとしてメモを書く習慣がない。どうやって書いたら効果的か、という以前の状態にある。もう片方には、毎日何かしらの「書くこと」を行っているが、当たり前の行為になっているがゆえに注意が向かず、技法としての探究対象になっていないという状態。そこでは「書くこと」は可能だが、いかに効果的に書くのかが問題になる。
自分の発見やそれを書き記すやり方を改善し、毎日書くものを少しでもうまく整理できるようになれば、白紙に向かい合った瞬間が違ってくる
自分の発見やそれを書き記すやり方を改善という表現が気になる
そのまま読めば、「自分の発見」と「自分の発見を書き記すやり方」の二つを改善するととれるが、自分の発見の改善方法が提唱されているのだろうか。
原文にあたる。
Writing is not what follows research, learning or studying, it is the medium of all this work. And maybe that is the reason why we rarely think about this writing, the everyday writing, the note-taking and draft-making. Like breathing, it is vital to what we do, but because we do it con-stantly, it escapes our attention. But while even the best breathing technique would probably not make much of a difference to our writing, any improvement in the way we organise the everyday writing, how we take notes of what we encounter and what we do with them, will make all the difference for the moment we do face the blank page/screen - or rather not, as those who take smart notes will never have the problem of a blank screen again.
だいぶはしょられている。
any improvement in the way we organise the everyday writing, how we take notes of what we encounter and what we do with them
三つある
日々のライティングを整理する方法
遭遇したことをメモする方法
そしてそれをどう使うか
を改善
邦訳の文とはかなり印象が異なる。
そもそも、「賢いメモ」をとるようになれば、白紙に向かい合うことは二度となくなる
rashita.iconキャッチーな言い方。特に準備していない原稿を一週間以内に書き上げなければならい下請けライターも同じように言えるだろうか。
そういう場合でもメモを使えば、白紙にいきなり取り組むことは避けられるが、それは別に「賢いメモ」である必要はない。
メモを使って執筆の準備にあてる方法は昔から検討されているのでこの技法のまったく新しい効能ではない
メモの取り方(原文ではNote-Taking)が注目されないもう一つの理由が、下手でも批判されない
rashita.icon使い方についてのフィードバックが発生しにくい、ということ
よくある流れの解説
原稿前(原文ではblank screen)で焦る→本屋に行く→「書き方を説く本」がたくさん並んでいる
rashita.icon原文では「白紙の原稿を前にして焦る」というニュアンスなのだけども、それが汲み取れない訳になっている
そういう読者の状況を見込んで、多くの出版社は「書くべきものは何もないのに的外れな状況に対処する方法をテーマにした本」を企画している
rashita.iconかなり意味が取りづらい
a market publishers meet in droves by focusing on how to deal with this horse-has-already-left-the-barn situation.
出版社は、この「馬はすでに納屋を出てしまった」という状況にどう対処するかに焦点を当てることで、この市場に大挙して参入する。
rashita.iconこれならわかる。
If we take notes unsystematically, inefficiently or simply wrong, we might not even realise it until we are in the midst of a deadline panic and wonder why there always seem to be a few who get a lot of good writing done and still have time for a coffee every time we ask them.
メモのとり方がいい加減だったり、効率的でんかったり、単純に間違っていたりすると、締め切りが迫るまでメモの使えなさに気がつかないことすらある。
If we take notes unsystematically, inefficiently or simply wrong, we might not even realise it until we are in the midst of a deadline panic and wonder why there always seem to be a few who get a lot of good writing done and still have time for a coffee every time we ask them.
rashita.icon締め切りが迫るというよりも「deadline panic」のさなかになるまで、という感じか。
そうしたときに正当化バイアスによって楽に書ける天才がいる、書くことは難しくて当たり前、産みの苦しみも楽しみのうち、という考えで、戦略の違いに目を向けないことが起こる
実際は、メモのとり方のよしあしの違いである可能性が高い
rashita.iconその論拠は特に示されてない
問うべき話題
「白紙に向かう何週間、何ヶ月、さらには何年も前から、すぐれた文章を簡単に書くための態勢を整えるためにできることは何か」
rashita.iconいわゆるメモ術であり、知的生産の技術系で言えばカード法が主題にしていること
正しい引用のしかたがわからなかったり、心理的な問題で書けなくなったり、といった理由で執筆に苦労する人はそんなにいません
rashita.icon本当だろうか。
友達とのメールやLINEのメッセージにはたいして苦労しないものです。
rashita.iconまさにその違いが「心理的な問題」ではないだろうか。
書かないで書く
それに、心理的な問題が発生しなくても、原稿が遅れる場合のほうがずっと多いはずです。
rashita.icon本当だろうか。
また、本当だとして、心理的な問題が無視できる論拠にはならない
見出し:白紙からのアウトプットは至難の業
白紙の神話(the myth of the blank page) 「書くことは、白紙から始まる」と思わされている
それが書くことの苦労を生み出している
白紙を埋めるための内容がないと思えば、焦るのも当然
頭の中に入っているだけでは不十分
文章にするのが難しいところだから
rashita.icon意味が取りづらい
If you believe that you have indeed nothing at hand to fill it, you have a very good reason to panic. Just having it all in your head is not enough, as getting it down on paper is the hard bit. That is why good, productive writing is based on good note-taking.
「頭の中にあるとしても、それだけでは不十分」ということなのか「頭の中に入っているものだけ(思い出せるものだけ)では不十分」ということなのか
itは何を指しているのか。
おそらく前後の文章の意味がつながっているとしたら、「頭の中にあるとしても、それだけでは不十分で書き出すことが必要なんだけども、その書き出すという部分が難しいんだよ」という意味なのだろうと推測
だからこそ、「すぐれた文章を生産的に生み出す営み」は、すぐれたメモとりに基づいている
rashita.icon逆に言えば、本書で提案される方法は、すぐれた文章を生産的に生み出す営みを支えるものだと受け取れる
頭のなかで考えを組み立ててから引き出すより、考えを書き留めたものを手元に用意するほうが、比較にならないほど楽です。
思考の素材化、ブロック化、オブジェクト化
文章や論文の質と書きやすさは、主題を決める前に何を書いておいたかによる
rashita.icon事前に書いておいたものを使える主題であれば、文章や論文の質や書きやすさは高まるというのが正確だろう
執筆の秘訣が準備にあるなら、ほとんどの自己啓発書と学習ガイドは馬が逃げた後の納屋を閉める役割しかない
rashita.iconもちろん誇張していっているに過ぎない
見出し:学問の世界ですら、IQの高さは必要ではない
学問の世界での成功を測る指標は、IQの高さではない
rashita.iconそりゃそうだ。
IQ120以上よりも上では、IQの高さと学界での成功については相関性はない
言い換えれば、IQ120よりも下では相関はある、ということ
また、学問の世界に入るためには、ある程度の知的能力が必要となる
一度入りさえすれば、IQが極端に高いからといってそれだけで権威になれるわけではない
rashita.iconそりゃそうだ。
広い知の世界で差がつくのはIQとは違った要因
手持ちの仕事に取り組むうえで、どれだけ自己規律や自制心を働かせるか
文献:Duckworth and Seligman 2005 Tangney, Baumeister, and Boone, 2004(★後で調べること)
rashita.iconドラッカーも同じことを述べている
あなたが誰であるかは重要ではなく、何をするかが重要
rashita.iconそれはそうだが、行動主義というか自己啓発的な匂いが感じられる
必要な仕事を賢くやれば、当たり前ですが成功につながるのです。
rashita.iconこれも当たり前で、そもそも「必要な」と「賢く」がむしろの定義になっているから。
それを行えば成功につながる仕事のことを「必要な仕事」というのだし、それを成果が上がるようにこなすことを「賢く」と呼ぶのだから。
rashita.icon必要な仕事とは何か、賢くそれをやるとはどういうことかを、本来根本的に検討する必要があるのではないか
良い知らせでもあり、悪い知らせでもある
良い点
IQそのものは自分のコントロール化にないが、仕事のやり方は「自己規律を高めて少し意志力を使えば自分の力が及びそうだ」から
rashita.iconこの「及びそうだ」は素朴概念だろうか。
たとえばそれは遺伝子の違いによって得意な人・苦手な人(あるいはできる人、できない人)が分かれないだろうか
rashita.icon自己規律はどうやって高めるのか、意志の力を使うにはどうすればいいか
悪い点
人間には、自分をそのようにコントロール能力が備わっていない
rashita.icon上の疑念がそのまま提示されている。
「生得的に備わっていない」ということだろう
自己規律や自制心を意志だけでつちかうのは簡単ではない
自制心と自己規律は、自分自身よりも環境の影響が大きい
環境は変えられる
チョコレートバーが周囲になければ、チョコレートバーを食べることを我慢するために意志の力を発揮させる必要はない
rashita.iconもちろん、周囲になくてもチョコレートバーを食べたいな〜と思うことは当然おこるので、完全な対策ではない。
もともとやりたいことをやるために意志力を使う必要もない
rashita.icon本当だろうか。あるいは定義を逆にしていないか。つまり意志力を使う必要がない行動を「もともとやりたいこと」と呼んではいないか。
興味があり、意味を持つ作業は、必ずやり遂げられます。遠いところにあるゴールと、目先のやるべきことのあいだに矛盾が生じないからです。
rashita.icon8割はその通りだろうが、そうでない2割くらいがあるのではないか。その意味で、単純なメッセージだが、読み手をアジテート(プロモート)するためにはこれくらいの単純さは必要かもしれない。
一方で、「やり遂げられなかった」人が出てきた場合、この言説は自身にかなり強い否定感を与えてしまうだろう。
意味があり、しかもはっきりとゴールが決められた作業は、常に意志を必要としません。
rashita.icon本当だろうか。
rashita.iconGTDと似たメッセージ性を感じる。
意志を持つのではなく、意志を使わなくてすむようにすることで、成功への態勢を整えることができる
rashita.iconこれはその通り。問題は、かりに成功という着地点があるとしたら、そこに至るまでにはかならず意志を持つことが必要になるタイミングがある、ということ。特に未知のものに取り組むときには「はっきりとゴールが決められ」ないわけで、そこを無視すると全体のマネジメントが破綻する。
意志を持たなくてもすむ状態にするために、ものを書くとき、メモをとるときにどう整理しておくかが大切になる
rashita.icon意味がとりずらい
Having a meaningful and well-defined task beats willpower every time. Not having willpower, but not having to use willpower indicates that you set yourself up for success. This is where the organisation of writing and note-taking comes into play.
有意義で明確に定義されたタスクを持つことは、常に意志の力に勝ります。意志の力がない、しかし意志の力を使う必要がないということは、あなたが成功への準備を整えていることを示しています。ここで、書き込みとメモの取り方を整理することが重要になります。
rashita.iconこれならわかる。